同族会社になった場合の税務上のデメリット

会社員
前回の記事では、同族会社の判定について説明しました。
今回は、同族会社に該当した場合の税務上のデメリットについて説明していきます。

同族会社は、特定の株主がその会社の過半数の株数を所有しているため、意思決定が速い反面、自由に経営できてしまうという側面もあります。
自由な経営の結果、攻めすぎた節税などで不当に税金を減少させてしまうようなケースも考えられることから、これを抑制すべく、税務上はいくつかの規定が設けられています。
同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させると認められる場合は、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の裁量で、その同族会社等の税額計算をすることができる、という規定です。

例えば、「社長個人が所有している土地の上に同族会社の建物を立て、地代を社長へ支払うとします。その際、近隣の相場では月額30万円がいいところであるにも関わらず、月額300万円の地代を支払う」など行き過ぎた行為をした結果、法人税が不当に安くなってしまったとします。このような場合に、これはけしからんといって、地代は月額30万が正しいとして税務署側の裁量で税額計算を始めてしまう可能性があります。
役員の場合の給与は、予め定められた月額報酬を支払い、賞与を支払う場合は、事前に届け出た金額を支払うことになります。すなわち、会社の利益を見ながらあとで支給額を調整できないようになっています。

一方、役員でない使用人の場合は、そのような決まりはなく、ある程度自由に支払いができます。 これを逆手にとって、代わりの者を社長にし、自分は陰に隠れて裏から指図するようなことも考えられます。これを認めてしまいますと、会社の利益を見ながら自分の給料を調整することで法人の利益操作ができてしまうことになります。
そこで、同族会社の使用人について、経営に従事し一定の株数を所有する場合は、みなし役員となってしまい、自由な給与の支払いができないようになっています。
特定同族会社となる場合は、会社が内部留保した金額に対して、追加的に課税される制度があり、留保金課税と呼ばれています。
基本的に資本金1億円以下の会社は該当しませんが、もし該当してしまう場合は注意が必要です。
【著者プロフォール】葛西安寿(かさいやすひさ)|葛西安寿税理士事務所 所長税理士
青森県弘前市出身。弘前市、仙台市の税理士事務所勤務を経て税理士法人トーマツで8年間の下積みを経て2014年に開業。港区芝浦にオフィスを構える。悩める社長に寄り添い、適切なアドバイスを心掛けながら背中を押してあげることこそが、使命であると考え日々の業務に励んでいる。