先見の明が問われる!?消費税の届出を賢く操るテクニック教えます。

消費税
税務上の届出書にはいろいろな性質のものがありますが、なかでも慎重に判断をしなければならないのが消費税に関する届出書です。その届出書を出すか出さないかで納税額に大きな影響が出ることもあるのです。

例えば、納税義務が免除されているのにわざわざ納税義務を生じさせて還付を受けたり、有利に働く計算方法を選択することで納税額を低く抑えたり、とお得な効果を生じさせる届出書が存在します。

今回は、消費税の届出書の中でも、特に注意が必要な「消費税課税事業者選択届出書」と「消費税簡易課税制度選択届出書」の二種類をご紹介します。
これらは、一度提出すると2年間継続して適用する必要があるため、2期分の会計を予測しながら判断する必要があります。

消費税課税事業者選択届出書

消費税の納税義務のない免税事業者が、あえて納税義務者になることを選択するための届出書です。
「なぜ、納税が免除されているのにわざわざ申告して納税する必要があるのか」と疑問に思われるかもしれません。
実は、課税事業者になっておくことで、還付を受けられることがあるのです。

あえて消費税の還付を受けるケース

消費税の納税額の計算方法を簡単に説明しますと、売上等に係る仮受消費税額から、仕入等に係る仮払消費税額を引いた差額が納税額になります。この計算結果がマイナスになる場合は、還付を受けることになります。

例えば設立第1期のように、売上があまり立たないのに、固定資産等の初期投資が多額に発生するような場合、仮受消費税額よりも仮払消費税額の方が多くなり、還付を受けられるケースがあるのです。この還付を受けるための前提として、課税事業者になっておく必要があります(もちろん、免税事業者の場合はそもそも申告義務がありませんので、還付を受けることはできません。)。

一見お得なように感じるかもしれませんが、2年間継続して適用しないといけない点に注意が必要です。

2期分の損益をセットで検討する

先ほどの例で、設立1期目は還付を受けることができて良かったかもしれませんが、設立2期目は事業が軌道にのって大きく売上が伸び、消費税の負担額も増えてしまうかもしれません。

課税事業者選択届出書を提出していなければ2期目も免税だったところ、「1期目の還付のメリットを大きく上回るくらい2期目の納税が重かった…」なんてことも起こり得ます。
課税事業者選択届出書を提出する前に、まずは2期分の損益の予測や設備投資の予定などをよく検討してから判断しましょう。

消費税簡易課税制度選択届出書

こちらは消費税の納税額計算において「簡易課税」を選択するための届出書で、2期前の課税売上高が5,000万円以下の会社だけが利用できる計算方法です。簡易課税とは、仮受消費税額から控除する仮払消費税額を、実際に支払った金額ではなく仮受消費税額に一定の率(みなし仕入率)をかけた金額を用いる方法です。
みなし仕入率は、次の通り業種ごとに定められています。
みなし仕入率
第一種事業(卸売業)90%
第二種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業))80%
第三種事業(製造業等、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業))70%
第四種事業(その他の事業)60%
第五種事業(サービス業等)50%
第六種事業(不動産業)40%
例えば、サービス業を営む会社で、仮受消費税額400万円、仮払消費税額100万円だった場合で考えてみましょう。

本来は差額の300万円を納税する必要があるのですが、簡易課税を選択している場合、400万円×50%=200万円を仮払消費税額に代えて用いるため200万円の税負担でよくなり、原則よりも100万円お得になるのです。
こちらもすぐ飛びつきたくなるところですが、2年継続適用となる点に注意が必要です。

もし2年目に本社移転や固定資産購入など多額の仮払消費税額が発生する予定であれば、簡易課税を選択せずに原則課税のままとしておき、2年目に多額の還付を受けた方が有利になる可能性もあります。

まとめ

消費税の届出は、先を予想しながら慎重に判断する必要があります。特に会社を設立して間もない頃は自分自身で2期分の予測を立てるのは難しいかもしれませんし、日々の業務に忙しく将来のことまで考える余裕などないかもしれません。
ご相談いただければ、一緒に将来の見込を検討したり、他社事例や類似業種の数値を参考にしたり、実際の人件費率・原価率等から今後の予測を考えたりすることもできます。安易に決定して損してしまうことがないよう、お気軽にご相談ください。