賃貸借契約から読み解く「住宅手当 vs 社宅」、どっちがお得?

732076_s
どちらも従業員の居住環境のための福利厚生制度ですが、税務上の取扱いが全く異なります。
住宅手当で従業員に支給する場合、基本給や残業手当などと同様の取扱いとなります。

これに対して社宅制度にする場合は、会社が家主と賃貸借契約を結び、それを従業員に貸して従業員から家賃の一部を徴収します。

具体的にどのような違いが生じるか、次のケースで考えてみましょう。

〈例〉10万円のアパートを借り、会社負担を6万円、従業員負担を4万円とするケース

① 住宅手当の場合
・賃貸借契約は、従業員と家主との間で締結する
・会社から従業員に住宅手当として毎月の給料に上乗せして6万円支払う
・会社が支払う住宅手当6万円は、給与として会社の費用となる
※6万円は給与所得として所得税・住民税の課税の対象となり、双方に社会保険料の負担も発生する


② 社宅の場合
・賃貸借契約は、会社と家主との間で締結し、会社から従業員に貸す
・会社が家主に支払う10万円は、地代家賃として会社の費用となる
・会社は従業員の給与から4万円社宅控除として天引きし、この4万円は会社の収入となる
※会社が負担する6万円は給与所得とはならず、社会保険料の負担も発生しない

このように、社宅制度は家賃手当と比較すると税制面でのメリットがあり、家賃手当として給与を増額するよりも同額の社宅を提供する方が、双方にとってお得と言えます。社宅制度の導入にあたっては押さえておくべき注意点があります。

先ほどの例のように会社が不動産を賃貸して役員や従業員に提供する借り上げ社宅と、会社所有の不動産を役員や従業員に貸す2種類の方法があります。一般的な借り上げ社宅についてご説明します。

会社は、家主と賃貸借契約を締結して家賃を支払い、役員や従業員から賃貸料相当額を受け取る必要があります。
賃貸料相当額を受領しないと、賃貸料相当額に満たない部分が給与となり、課税の対象とされていまいますので注意が必要です。

従業員の場合の賃貸料相当額は、次の金額の合計額になります。


(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
(なお、従業員の場合はこの金額の合計額の半分以上を受け取っていれば、給与として課税されません。)


役員の場合は、99㎡以下の小規模な住宅の場合は上記算式によって計算した金額が賃料相当額となりますが、そうでない場合は会社が家主に支払う賃料の50%と上記算式で計算した金額とのいずれか多い方の金額が賃料相当額となります。
また、240㎡を超えるなど豪華社宅に該当した場合は、会社が家主に支払う賃料全額を役員から受領しなければなりません。



トラブル防止やスムーズな入退居手続きのため、予め社宅規程を作ってルールを明示しておきましょう。
また、給与からの賃料相当額の天引きが法律違反とならないよう、就業規則への記載や本人からの合意書を受領するなどの手続きが必要となります。