通常は、実際にかかった金額で精算をしますが、出張旅費規程に日当などを定めておくと、これら実費に加えて日当も会社の費用にすることができます。
国内出張の手当は消費税の課税取引ですので、会社の仕入税額控除の対象になります。
受け取る個人の側から見ると、日当は給与ではなく非課税所得となることから、所得税や住民税が課税されません。
所得税の最高税率は45%(住民税と合わせると55%)ですので、非課税というのは大きなメリットです。
また、個人に対する給与にならないということは、社会保険料の負担も発生しませんので、個人にとっても法人にとっても嬉しい制度です。
宿泊費については、実額ではなく予め規程で定めた金額で支給することも可能です。
毎回実額で精算するよりも経理の手間を省くことができます。
旅費規程を作成する際には、いくつか押さえておくべき次のような注意点があります。
①全社員を対象とすること
役職によって金額や取扱いを変えることは可能ですが、対象を一部の役員や社員に限定することはできません。
②他社と比較して適当な金額であること
一般的な日当や宿泊費の額よりも高すぎる金額を定めてしまうと、高すぎる部分は給与とされるリスクがあります。
③旅費に関する書類を保管しておく
旅費申請書などを作成し、領収書と一緒に保管しておく必要があります。
出張旅費規程に定める必要のある内容は次の通りです。
➀規程の目的
出張旅費規程の目的を定めます。
「役員又は社員が業務により出張する場合の手続及び旅費に関して定める」といった文章が一般的です。
②適用範囲
原則として会社に所属する全員が対象になります。
役員について別規程で定める場合には、その旨を記載します。
③出張の定義
出張の定義を定めます。
移動距離が片道100キロを超えるものを出張と定義している会社が多いようです。
また、距離によって、遠出張や近出張などを定めることも可能です。
会社の営業所の場所などを考慮しながら、具体的に定めておくと良いでしょう。
④旅費の種類と金額
交通費、宿泊費、日当などの金額をそれぞれ定めます。
交通費は実費精算です。
宿泊費も一般的には実費精算ですが、定額支給とすることも可能です。
日当は宿泊の有無や距離で区別できるほか、長期の出張については減額することも可能です。
いずれも、社長や役員、役職者、一般社員などに応じて差をつけることができます。
これらのほかに、出張時の食費に対する手当を支給する会社もあります。
⑤出張旅費の申請方法
出張申請書や出張報告書などの提出方法や必要な添付書類、提出期限などを定めます。
経理作業を簡便にするためにも、予めフォーマットを定めておくと良いでしょう。
出張旅費規程は、会社にとっても社員にとってもメリットが大きい制度ですが、上記ポイントを押さえずに制定した規程で運用してしまうと、給与として課税さるリスクがありますので注意が必要です。
税務調査の際に指摘されないよう、「一般的な規程に比べて設定額が高すぎないか」、「出張の頻度は適正か」、など他社との比較をしながら規程を制定し運用していくことが大事ですので、当事務所へご相談ください。